障害者スポーツ啓発講習会開催
2002年3月3日(日) 名古屋国際会議場
講演T
知的障害者スポーツを取り巻く国内・国際情勢
講師
日本体育大学 専任講師
    野村一路さん



        



左側の組織、パラリンピックを頂点とする競技レベルの高い、アスリートたちの組織。

IPC(インターナショナル パラリンピック コミッティー 、パラリンピックの主催団体。
IPC
IOC(インターナショナル オリンピック コミッティー)とは両輪の輪。

シドニーのオリンピックでは一部、公開競技として車椅子の陸上がオリンピックの中で開催された経緯があり、オリンピックの種目をパラリンピックでやらないのだろうかと素朴な疑問が残る。IPCとしてはIPOと一緒にやりたいという動きになっているらしい、なぜか?一番大きな理由は「お金」パラリンピックだけでお金を集めようとしても集まらないのが現実。

 IPCの加盟団体・・・各国地域の団体が加盟と各種目別団体が加盟。(日本ではJPC(ジャパン パラリンピック コミッティー))その加盟団体の一つに INASFID (国際知的障害者スポーツ連盟)がある

 右側の組織、SOI(スペシャル オリンピックス インターナショナル)

「オリンピック」という文字はIOCが管理。「オリンピック」と名乗ることができる
団体は世界で3つ。「IOC」「SOI」そして「ジュニアオリンピック」


IOC」の一番の基盤はオリンピック ムーブメント。世界のトップアスリートを集めてオリンピックを開催するというとは、一つの事業。一番大事なことはオリンピック運動を広めていくということ。その中のプログラムとして4年に1度のオリンピックがあるという理解が本来の考え方。このオリンピック ムーブメントを勧めてくれるということがはっきりしている団体が「オリンピック」と名乗ることを許されている。

 競技会や大会や記録が問題なのではなく日常の生活の中にスポーツをどう位置付けるか。あるいはスポーツを行う事によって、生活がどのように豊かになるか、質があがるのか、スポーツを通じて多くの人とコミュニケートする、連帯する、それが世界平和に通じる。こういう考え方がオリンピック ムーブメントの基盤にある。

これが知的障害者スポーツを考えたときのもう一つの大きな流れである。

 

国際情勢について

 国際的な知的障害者スポーツ団体の統括団体はINASFID(アイナスーエフアイディ)(International  Sports  federation   for  Persons  with  Intellectual  Disability)アイナスでは知的障害のことを「for  Persons  with  Intellectual  Disability」といっている。しかし、この言い方は絶対これでなければならないというふうにはなっていなくて、国によって違う。     
Intellectual  Disability」知的障害、パラリンピックでは知的障害者のクラスのことは「ID」で表現。

INASFID(国際知的障害者スポーツ連盟)1986年に設立されIPCに加盟。

INASの問題 Vol.1
シドニーパラリンピックの時、バスケットボールで問題が起こる。IPCからはIDクラスはパラリンピックはやらないと宣告される。IPCにたいしてINASが「知的障害とはいかなるのものか」ということを示し、IPCが了解しないとパラリンピックにIDのクラスは戻ってこないという状況があり、残念ながらソルトレイクではIDクラスは開催されず。

  課題は・・・

 
IPCに知的障害のことを認めてもらい、知的障害は今後国際的にはどう変わっていくのか?考えなくてはならない。アトランタのパラリンピックを見ていて「どうして彼がIDなのか?」と疑問をもった。その国の関係者に聞いてみた。答えは「彼は文字が読めないから」。日本ではそれは教育上の問題でIDと関係ないのではと思ったが、その国では「彼はIDと認めたのだからいいのだ」ということ。ナショナル パラリンピック コミュニティが認めれば出られた。

INASFIDにはトータルで86の国が加盟。

INASの問題 Vol.

組織力の弱さ。
副会長は空席、事務局長も空席、広報担当も空席、北アフリカや中東地域も代表が決まっていない。組織がいかに弱いか、IPCからいろいろ言われてもきちんと説明ができない現状。


SOI
Special Olympics International
 
 SOIは1968年に組織され、100万人以上のアスリートがいて150以上のプログラムを行う。

地域                アジアパシフィックの国々 

アフリカ アジアパシフィック イーストアジアチャイニーズ  ヨーロッパ ユーラシア ラテンアメリカ ミドルイーストノー スアメリカ 

マネージャーはインドの人。オーストラリア、韓国、バングラディッシュ、マレーシア、フィリピン、ネパール、シンガポール、インドネシア、ニュジーランド、タイ、日本、パキスタン

SOIの世界大会

2003年にはワールドサマーゲームを開催予定。これには160の国から7500人の選手が参加。2005年SOワールドウインターゲームが長野で行われるということが決まっている。2500人のアスリートが長野に集まって650人のコーチ、ボランティアは1万人以上、80を超える国から集まるということになっている。
 種目はアルペンスキーにクロスカントリー、スノーボード、フィギアスケート、スピードスケート スノーシュー、フロアホッケー。

 大会規模だけを見ると、INASIFDSOも同じに見えるが、内容ややり方、
位置付けは違う。


国内情勢について

 日本の知的障害児(者)スポーツの統括団体
「日本知的障害者スポーツ連盟」


以前は「手をつなぐ親の会」(現在は知的障害者育成会)が中心となって知的障害児(者)のスポーツを振興、諸外国との窓口も「手をつなぐ親の会」が担当。
 しかし、知的障害者スポーツの広がりと共に、種目の増加、競技レベルの向上とから専門にやる組織が必要だということになり「日本知的障害者スポーツ連盟」を設立。
 
連盟所属団体
「知的障害者水泳連盟」「陸上連盟」「卓球連盟」「ハンディキャップサッカー連盟」「バスケットボール」「障害者クロスカントリー協会」

全国障害者スポーツ大会(全スポ)の課題

平成13年 第1回全国障害者スポーツ大会(宮城県)

初めてIDの大会「ゆうあいピック」と「全国身体障害者スポーツ大会」が統合された大会。
理念・・・身体も知的も同じスポーツをする仲間、一緒に集まって交流を深めながらやろう」
しかし、実態としてそうなったか?課題がたくさんあるのが現実


課題 そのT

同じ県の選手団でも交流が少ない

 同じ選手団のバスケットボールでも「車椅子バスケットボール(身体障害者)」と「(知的障害者の)バスケットボール」とあり。都道府県によっては2つのチームが出てきたところもある。車椅子と立位の違いはあっても同じ都道府県のバスケットボールチームなのだがらもっとお互いに交流みたいなものがあってもいいのだが、宿舎が別々(ほとんどのところが、身体と知的の宿舎は分散されていた)だったり、一緒の宿舎でもほとんど交流がないといったところもあった。
「全国障害者スポーツ大会」は「ジャパン パラリンピック」とは違う。後者のほうはトップを決める、強い人は何回でも参加できる。前者のほうは今までの「身体障害者スポーツ大会」「ゆうあいぴっく」のいい部分を踏襲されている、いろんな人がいろんな経験を積むことができるようにという目的がある。それが真の意味でそうなるためには課題はたくさんある。
今年は高知県で「よさこいピック」高知大会マスコット「くろしおくん」

2003
年は静岡で「わかふじ大会」、   静岡大会マスコット「ふじっぴー」

2004
(平成15)年は埼玉県で開催。(競技については「よさこいピック」のHPを参照)


課題その2

全スポには力が入らない?

 開催地は全スポを開催したくて行うわけではなく「国民体育大会(国体)」を開催するからそのあと全スポもやるという形になっている。国体事務局はそういう感覚でやろうとしているから国体が終ると力が抜けてしまう。



 国体と全スポはどうなっていくのか?オリンピックとパラリンピックはどうなっていくのか?考えていかなければならない。
身体と知的、以前は別々全国大会を開催、統合された一番の理由は経費の問題。それだけで統合され、理念がどこかへいってしまったなんてことにならないように、参加選手にとってよりよい大会にしていかなければならない。
 では、どういう種目がいいのか、どのように競技を開催していくべきか、始まったばかりなので回を重ねるごとに研究をしていく必要がある。


S OSpecial Olympicsについて

 Special Olympics International」の種目

 「アルペンスキー」「サイクリング」「ローラースケート」「水泳」「乗馬」「ヨット」「陸上」「フィギアスケート」「ソフトボール」「バトミントン」「フロアホッケー」「バスケットボール」「サッカー」「卓球」「ボッチャ」「ゴルフ」「ハンドボール」「ボウリング」「体操」「テニス」「クロスカントリースキー」「パワーリフティング」「バレーボール」

 これを「SO」では日常生活の中で、知的に障害をもっている人が指導してくれる人やボランティアと一緒になってスポーツ活動をするという活動をしている。そしてその発表の場として国内大会や国際大会がある。世界(国内)で一番を決めるということではなくて、どれだけに日常生活の中でスポーツに取り組んで、成果があったか、それは結果(成績)ではなくて、人間として豊かになっていったかということをお互いに発表しあう場が国内・国際大会であるということを「SO」は考えている。


財団法人 日本障害者スポーツ協会について
 

 財団法人日本身体障害者スポーツ協会は、1964年に開催された東京オリンピック、パラリンピックの翌年「身体障害者スポーツ大会」が開催され、日本身体障害者スポーツ協会が設立。
 そして35年間いろんな大会をやり平成11年にやっと「身体」の文字がとれて「日本障害者スポーツ協会」となった。
 知的障害者のスポーツは「手をつなぐ親の会」が中心となってやっており、養護学校や身障学級というところがやっていた。ところが卒業した後はなかなかスポーツ環境に恵まれず活動ができない。そうした人のことを考えて「ゆうあいピック」というのが10年前に開催された。しかし「ゆうあいピック」は10年で消滅。10回重ねてきて、認知度も上がってきたところで統廃合。
 身体障害者スポーツ大会は昭和40年から続いていて歴史もある、そこに「ゆうあいピック」がある意味、統合吸収された部分もある。お互いに歩み寄る部分もあったので「ありました」と言い切ることはできないが、・・・ただ、やはり「障害者スポーツ協会」もあとから「知的」が入ってきたという認識がないわけでもない。真の意味で「障害者スポーツ協会」と言わしめるためには、身体が主であり知的がその後をついていくということではだめ。そのためにも知的障害者のスポーツ組織ももっとしっかりしなくてはいけない。

知的障害者スポーツの課題

  (1)重度知的障害者のスポーツ参加
 (2)支援者の養成・育成・指導資格の検討
 (3)スポーツ環境の整備
 (4)学校・地域・施設・企業の連携
 (5)身体障害者→知的障害者→精神障害者
 (6)国内障害者スポーツ組織の強化
 (7)世界都合組織の強化
 (8)スポーツレベルの高度化

(1)重度知的障害者のスポーツ参加・・・スポーツは日本では「する」のが当たり前という感覚があるが、スポーツの参加の仕方は「する」だけではない。Jリーグをみてもあのサポーターというのはものすごいスポーツ参加だと思われる。読んだり、見たり、聞いたり、スポーツのことを話題にするということだけでもスポーツを楽しむという、一つの参加の仕方ではないか?
 重度に障害があっても、スポーツの参加の仕方はたくさんある。「重度だからスポーツなんてできない」という人は「する」ということを前提に考えているから。スポーツに参加してスポーツを通じて生活を豊かにするという方法はたくさんある。
 スポーツ指導者というと「する」ということが前提にきがちだが、「スポーツ環境を整備する」という立場になれば、スポーツ参加をいざなう、スポーツに参加できる、スポーツを通じて生活を豊かにしていくという方法をいかに支援できるか?を考えなくてはならない。

(2)支援者の養成・育成・指導資格の検討・・・日本障害者スポーツ協会が「障害者スポーツ指導員の有効活用」という研究会を設けている。初級レベルは共通項でいいけど、「私の専門は知的障害」という方には知的障害の方のスポーツ指導を専門に行うという資格を作っていかなくてはいけない。専門的なものとして種目別あるいは、対象者別ということでレベルをあげていく必要がある。

(3)スポーツ環境の整備・・・知的障害というのは重度でないとバリヤフリーというのはあまり関係がない。むしろ人の理解。文字やサインだってわかるように大きく書いてくれるとか、ルビをふってくれるという、そういう工夫が必要。

(4)学校・地域・施設・企業の連携・・・学校時代は一生懸命スポーツをやるが、卒業後は身体を動かすことが少なくなってしまう。この連携は痛切に感じる。

(5)身体障害者→知的障害者→精神障害者・・・いずれは3障害統合のスポーツ大会、しかし、精神障害者へのスポーツ支援というのはまだ研究がはじまったばかり、スポーツ指導員としても学ばなければならないことがたくさんある。

(8)スポーツレベルの高度化・・・パラリンピックのアスリートの競技レベルは年々高度になっている。残念ながら今回のソルトレイクオリンピックでもドーピングの問題が大きく報道されて、オリンピックのイメージを悪くしているし、スポーツに関するイメージを悪くしている。
 勝ちたいから、何をしても勝ちたいから。競技レベルが高くなればなるほど勝つためにはいろんなことをしなければならない。してはいけないこともしてしまう。
 しかしながら、人間の持っている可能性を突き詰めていこうとしている姿はすばらしい。限界に挑戦しようとする姿は多くの人に勇気や感動を与える。

 メダリストはメダリストになるために支援をするのではない。メダリストになってからが大事、メダリストという人の社会的な存在は極めて高い、そう認めることが日本のスポーツ文化が高まることになる。日本はメダルをとったら終わり、みたいなところがある。スポーツ文化が高い国ではメダリストとしての生き方がみんなに影響を与えています。メダリストとしての生きざまが多くの人に勇気と感動を与えている。スポーツレベルの高度化というのは、メダルをいくつとるかということが問題ではなく、メダリストがメダリストとして社会的に存在価値をもって生きて行けれるということが大事ということにつながっていく。


※以上の報告は、講演の内容を正確に記述したものではなく、その概要を要約したものです。


雑・感 草  

 
講師の話は自分の日ごろの活動からは想像すらできないような、スケールの大きい話でした。活動と結びつけることは非常に難しいが、知的障害者スポーツの現状と課題がよくわかり、なーんだ、世界も日本のトップも、地域も同じなんだということは理解できました。(K)

 「指導員の有効活用?」・・・「えーっ!何それ?」専門スポーツもなく、スポーツの人でもない私、活用されないのはいいけど、勝手に判断されたくないなぁ・・・(S)

 「スポーツを観たり、話題にすることもスポーツ参加になる」といわれました。でも上手く言えないけど・・・少し違うような気がします。確かに走ったり、跳んだり、投げたりすることだけがスポーツではないとは思いますが、「観たり」「話題にしたり」することも「スポーツ参加」というのはしっくりきません。重度といわれる人にもその人に合ったスポーツ(DISPORT)があります。あるはずです。(Y)

 ソルトレイクパラリンピック、某地方紙ではスポーツ面で取り上げられていません。パラリンピックはスポーツではないのでしょうか?
また、悲しいくらい話題性がありません。なぜ?(U)


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